足底筋膜炎は、足底筋膜に過剰な負担がかかることで引き起こされる疾患です。
足底筋膜は踵骨(かかと)から足指の基部に広がる強靭な結合組織で、足部の安定性を保つと同時に、歩行時の衝撃吸収や推進力の伝達に重要な役割を果たしています。
この結合組織が、繰り返される微細な損傷や炎症により痛みを引き起こす状態が足底筋膜炎です。
その発症に深く関係しているのが「内側縦アーチ」の構造とその機能です。
本記事では、足底筋膜炎の原因を内側アーチとの関連性を交えながら専門的に解説します。
足底筋膜炎の原因
足底筋膜炎の主な原因は、足底筋膜に過剰な負担が繰り返し加わることです。この負担は、以下のような状況で特に顕著になります。
・長時間の立ち仕事: 立ち続けることで足底筋膜に一定の負荷がかかり、緊張が持続します。
・ランニングや運動量の急増: 足底筋膜が強い衝撃を吸収しきれず、微細な損傷が蓄積します。
・足部アライメントの異常: 内側アーチの低下(扁平足)や過回内(オーバープロネーション)など、足部の構造的な不安定性が原因で負担が増加します。
内側縦アーチの役割
内側縦アーチ(以下、内側アーチ)は、足部の安定性と機能性を支える重要な構造です。
このアーチは、踵骨、距骨、舟状骨、第1楔状骨、第1中足骨を主な構成要素とし、これらを連結する靭帯や筋肉(例:後脛骨筋、長趾屈筋)がアーチを保持しています。
内側アーチの主な機能は以下の通りです。
衝撃吸収
歩行やランニング時に地面からの衝撃を効率的に吸収し、足底筋膜にかかる負担を軽減します。
内側アーチが存在することで、歩行時の地面からの衝撃を吸収し分散することができます。
内側アーチが崩れることで多くの場合足底筋膜の付着部に強い衝撃が加わり炎症を起こしてしまいます。
エネルギーの保存(吸収)と伝達(推進力)
歩行時のプッシュオフ(足を蹴り出す動作)で、足部の剛性を高め、効率的な推進力を生み出します。
足根骨は足首の向きによって剛性が変わります。
底屈(蹴り出し)の際には足根骨の剛性が高まり、背屈(着地)の際には足根骨の剛性が弱まります。
蹴り出しの際に剛性が弱まると推進力が得られず、着地の際に剛性が高まりすぎると衝撃吸収がうまくいかなくなります。
内側アーチが崩れている場合、常に剛性が高い状態になってしまうため足底筋膜の付着部に強い刺激が加わってしまいます。
足底筋膜の緊張の調節
内側アーチが適切な高さを保つことで、足底筋膜が適度なテンションを維持し、足部全体を安定させます。
足底筋膜はバネのように適度な張力を保つ必要があります。
弛みすぎても機能を果たせず、逆に張り過ぎていると足底筋膜炎を引き起こしてしまうリスクが非常に高くなります。
ウィンドラス機構と足底筋膜炎の関係
足底筋膜炎は、足底筋膜に繰り返される微細な損傷や炎症によって生じる疾患で、多くの方が悩まされています。
その発症には、足底筋膜がどのように機能しているか、これまで解説してきた内側アーチと「ウィンドラス機構」は非常に密接に関係しています。
ウィンドラス機構とは?
ウィンドラス機構(Windlass Mechanism)は、足部の生体力学的な機能のひとつで、足底筋膜が内側アーチの高さや安定性を調整する重要な役割を果たします。
この機構は、足趾の背屈(蹴り出し)によって足底筋膜が引き伸ばされる際に発動し、足部全体の剛性を高めて効率的な歩行やランニングを可能にします。
内側アーチの崩れが無い状態であるからこそウィンドラス機構の効果が体にしっかりと現れますが、内側アーチが崩れてしまうことでウィンドラス機構は正常に働くことができなくなってしまいます。
ウィンドラス機構の発生の流れ
ウィンドラス機構は歩行の際に足が設置してから離れるまでの一連の流れの中で作用します。
歩行を考えるときは前半相、後半相などと考えることが多く、ウィンドラス機構は特に前半から後半に移行する際に作用します。
右足を軸に考えてみましょう。歩行の際に左足が地面に接地している時は右足は体の前にある状態を前半。右足が左足の後ろにある状態が後半です。
つまりウィンドラス機構は足が設置してから蹴り出すまでの少しの時間に作用し、歩行をする際に体を前に進めるための推進力を得るために非常に大きな役割をしているのです。
足趾の背屈(接地から蹴り出し)
歩行やランニング時に足趾が背屈(蹴り出し)すると、足底筋膜が足趾(足の指)から踵骨まで引っ張られるように張力が加わります。
内側アーチの上昇
足底筋膜の張力により、内側縦アーチが持ち上げられ、足部全体が安定します。
このアーチの上昇は、地面からの衝撃を吸収しつつ、推進力を効率的に生み出すために重要です。
足部の剛性向上
ウィンドラス機構が作動すると、足部が一体化して剛性が高まり、エネルギーを無駄なく次の動作に伝達できます。この剛性が不足すると、エネルギー効率が低下し、足底筋膜に過剰な負担がかかることになります。
ウィンドラス機構と足底筋膜炎の関係
ウィンドラス機構が正常に機能しない場合、足底筋膜には過剰な負担がかかり、足底筋膜炎を引き起こしやすくなります。この関連性を以下のポイントで詳しく説明します。
内側アーチの低下とウィンドラス機構の障害
内側アーチが低下(扁平足)すると、ウィンドラス機構の効率が大幅に低下します。その結果、以下のような問題が生じます。
- 足底筋膜への負荷が増大し、炎症を引き起こす
- 歩行やランニング時に足部が過剰に動き、不安定性が生じる。
足趾の可動域制限
足趾の背屈が制限されている場合、ウィンドラス機構が十分に機能しなくなります。この問題は、以下の原因で発生することが多いです。
- 足部内在筋の弱化
- 硬い靴やインソールの使用による足趾の可動域の制限
- 外反母趾や他の足部変形。
過回内(オーバープロネーション)の影響
過回内は、歩行時に足が過度に内側に傾く状態で、ウィンドラス機構を正常に機能させるための条件を阻害します。
これにより、足底筋膜が引き伸ばされすぎて損傷しやすくなります。
ウィンドラス機構を改善するための自宅セルフケア方法
ウィンドラス機構は、足底筋膜や内側縦アーチの健康を支える重要な機能です。この機構が正常に働かないと、足底筋膜炎や足部の不調を引き起こしやすくなります。そこで今回は、ウィンドラス機構を改善し、足の健康をサポートする自宅でできるセルフケア方法を詳しく解説します。
1. 母趾伸展ストレッチ
ウィンドラス機構の中核となる足底筋膜を直接刺激するストレッチです。簡単に実践できる上、足底筋膜の柔軟性と機能を向上させる効果があります。
方法:
1、座った状態で片足を反対の膝の上に乗せます。
2、片手で足の母趾を持ち、後方(足の甲側)にゆっくりと引き上げます。
3、足底筋膜が伸びている感覚を意識しながら、20~30秒間保持します。
4、 反対側の足でも同様に行います。
ポイント:
・ 無理に力を入れず、心地よい伸びを感じる範囲で行いましょう。
・毎日2~3セット行うと効果的です。
2. タオルスクランチ
内側縦アーチを構成する筋力を強化する運動です。特に足部内在筋(足の内側の小さな筋肉)の活性化に役立ちます。
方法:
1、 床にタオルを広げ、椅子に座った状態で足をタオルの上に置きます。
2、足指を使ってタオルをつまみ、手前に引き寄せる動作を繰り返します。
3、片足10回を1セットとして、両足で3セット行います。
ポイント:
・タオルを引き寄せる際、アーチが自然に持ち上がる感覚を意識しましょう。
・負荷を増やしたい場合は、タオルの上に軽い物を置いて行うことも可能です。
・座って余裕でできる場合は立った状態で行うとさらに良いでしょう。
最も簡単な生活習慣の改善
足に合った靴の選び
生活を送る上でほとんどの方が使用するのが「靴」です。
靴の選び方や、履いている靴が体に及ぼす影響は尋常ではありません。
足は人間の体の基礎です。わずか数十センチの上に1メートル以上のものが立ち、さらにそれを前後左右に安定して動かさなければいけません。
その基礎と地面の間に入れるものですから、それは体に及ぼす影響は大きいと考えるのが普通ですね。
足底筋膜炎を改善する上では靴選びは非常に大切なポイントになります。
足根骨の歪みを誘発しやすい靴と踵のホールド力の関係
足根骨は足部のアーチ構造を支える基盤となっており、これらの骨の位置や動きが正常であることは、歩行や立位時の安定性において非常に重要です。
最も重要なのは「踵のホールド力」です。踵のホールド力が弱い靴を使用することで足根骨の歪みを誘発し、足部全体の機能に悪影響を与える可能性があります。
踵のホールド力が弱い靴の特徴
踵のホールド力が弱い靴とは、足部後方をしっかりと固定できない靴を指します。具体的には以下の特徴があります。
- 柔らかい素材: 踵部分が柔らかく、足を固定する力が不足している
- ヒールカウンターの不在: 靴の踵部分の補強材(ヒールカウンター)が欠如している
- デザイン的欠陥: スリッポンやバックレスシューズなど、足首を安定させないデザイン
これらの靴を履くと、足部の安定性が低下し、足根骨の位置が不安定になる可能性があります。
足根骨の歪みと踵のホールド力の関係
踵のホールド力が弱い靴を履くことが足根骨にどのように影響するのか解説します。
過回内(オーバープロネーション)の誘発
ホールド力が弱い靴では、足部が内側に過剰に倒れ込みやすく、過回内が生じることがあります。過回内は、以下のように足根骨に影響を与えます:
- 踵骨の内側傾斜: 踵骨が内側に倒れることで、足部全体のアライメントが崩れます
- 舟状骨の下降: 過回内により舟状骨が下降し、内側縦アーチが低下します
足部の動的安定性の低下
踵部分のホールドが不足していると、歩行やランニング時に足根骨が過剰に動く可能性があります。これにより、以下の問題が発生します。
- 距舟関節(きょしゅう関節)の不安定性: 距骨と舟状骨の関節が不安定になり、足部の機能が低下します。母趾からの伝達がうまく全身に波及できずに足の裏の痛みを引き起こします。
- 内側縦アーチの崩壊: 足根骨が過剰に動くことでアーチが支持を失い、負担が増加します。
足底筋膜への負担増加
足根骨の歪みにより足底筋膜にかかるテンションが増加します。
特に踵骨が適切に固定されない場合、足底筋膜が過剰に伸張され、足底筋膜炎のリスクが高まります。
踵のホールド力が足根骨に与える影響を防ぐ方法
足根骨の歪みを予防し、正常な機能を保つためには、以下の対策が有効です。
適切な靴の選択
- ヒールカウンターのしっかりした靴: 踵部分が硬く、足をしっかりホールドできる靴を選びましょう。
- アーチサポートのあるインソール: 足底を適切に支えるインソールを使用することで、足根骨の位置を安定させます。
- サイズの適合: 靴が大きすぎると踵が動きやすくなり、不安定性が増すため、足に合ったサイズを選びましょう。
ビーチサンダルがおすすめ
ビーチサンダルと聞くと足に悪そうなイメージがあります。
またこれまでお話ししてきた踵のホールドも無くなるのでより足に悪そうなイメージがありますね。
しかし、通常のサンダルとビーチサンダルの大きな違いは、親指と人差し指の間の引っ掛けです。
今から数百年前の江戸時代では、草履を履いて1日に何十キロも歩くことが普通の世の中でした。
草履の構造とビーチサンダルの構造。似てますよね?
実は我々の足は親指の1本とそのほか4本は別々で連動して動くのです。手と同じだと考えてください。私たちの先祖はお猿さんです。木登りをする時には親指とそのほか4本を巧みに使っています。
今となっては「手」と呼んでいますが、元を正せば「前足」です。
つまり、足の使い方も「手」と同じであると言えます。
冬場にはなかなか履くことはできませんが、夏場の間にビーチサンダルや草履のようなものでしっかりと足の構造を元に戻しておくことで足本来の使い方を再学習させることが可能になります。
まとめ
上記で解説したセルフケアなどを毎日しっかりと行うことで内在筋や後脛骨筋など、アーチを支える筋肉を鍛えることができます。
究極の状態は、体の状態に合わせて靴を選ばなくてもいいと言う状態です。
思い返してみてください。子供の頃この靴でないと遊べないと言う感覚はありましたか?学生の頃この靴でないと外出できないと言う感覚はありましたか?
好きな靴を好きな時にどれだけ履いても痛みが出ることはなかったはずです。
それは内側アーチが崩れておらず、ウィンドラス機構がしっかり仕事をしていたからですね。
今、足の裏に何かしら異常を抱えているあなたは、多くの場合この内側アーチとウィンドラス機構に問題があるはずです。
トレーニングを行うことも手段ですし、それ以外にも行えることはたくさんあります。
足底筋膜炎に限らず足の症状でお悩みの方はぜひ一度当院までお問い合わせください。
きっとあなたの力になれるはずです。
足底筋膜炎が改善した患者様の声
痛み、不調が改善しました!
症状:手の痺れ、足の痛み、自律神経
病院では手の痺れは頚椎のヘルニアと手根管症候群、足裏の痛みは足底筋膜炎で痺れは原因わからないで診察終了。何をどう頑張り努力すればいいのかわからず、酷くなる痛みと痺れを我慢する努力をし、いつの間にか努力してる意識もなくなり痛み痺れがあるのが私の身体なんだと。
そんなとき海老野先生に出会いました!先生は根本を見付け!根本を治療する!それだけじゃなく食生活や自律神経も関係していると教わりました。人間の本来の力がスムーズに働くよう治療するというか、上手く言えませんが、治療中に痺れがスゥッとなくなり、帰り道では痛みはどこへいった?です。何日か経つと症状がでてきますが治療を根気よく続けていると間隔が空いてきます。今事情があり2ヶ月治療受けれずですが症状出ることなく過ごせています。海老野先生は私にこうなってもらうために治療をしてくださっていたんだと感謝しかありません。
海老野先生は患者と心から向き合い、必ず治す!という気持ちが伝わってきます。お話しを聞いていても、日々勉強をされていて努力をされているのがわかります。痛みや痺れで辛い日々を過ごされている方、えびの治療院に足を運んでみてください。絶対に諦めないてほしいです!
都筑区|ミヤ|50代|女性
足首の痛みが改善しました!
日常生活では特に寝起きが痛く歩くのも困難でした。正直良くなるまでにかなり時間がかかると思っていました。
治療を行ってもらい、徐々に寝起きの痛みがなくなり、歩行時の痛みが改善されていきました。少しずつ動けるようになって、ランニングも可能になりました。
海外でサッカーを行っているのですが、普通は安静にしながら治療を受けると思いますが、横須賀えびの治療院では動かしながら治療を受けることができました。
海老野先生が非常に親身に話を聞いてくれるので安心して治療を受けることができました。
アスリートなど運動を行っている人で早期回復したい方には是非お勧めしたいです!
オーストラリア|川崎凌|25歳|男性