皆さんはどこか怪我をした時に固定をしたことはありますか?
骨折や脱臼、捻挫などの外傷では、基本的に固定を行うことがほとんどです。
骨折であれば骨が繋がるまで、捻挫であれば靭帯が繋がるまで、ギブスやテーピングで固定をして、組織が修復したら固定を外すという治療法が一般的です。
しかし、固定を行えば本当に怪我をする前の元の状態に戻るのでしょうか?
固定をすることは治すということにおいて、本当に良い事ばかりなのでしょうか?
この記事では、足関節捻挫を固定するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
足関節捻挫の基礎知識
足関節捻挫は足首の捻挫で、足首の靱帯が伸びたり切れたりしてしまった状態です。主にスポーツ選手に多い怪我ですが、普通に生活している中でも、段差で足を捻ってしまい、足関節捻挫を受傷してしまうケースも非常に多いです。
また、靴が足に合わない、女性の場合ヒールを履いて歩いていただけ、かなりの長時間立ちっぱなしだったなど、大きく足を捻った訳では無いのに足関節捻挫になってしまうケースも珍しくありません。
捻挫の種類は大きく分けて2つのパターンに分離できます。さらに重症度によって大きく3つのグレードに分けて診断を行うことができます。

捻挫の種類
外反捻挫
足首を外側に捻る(足の裏が外側に向く)
内反捻挫
足首を内側に捻る(足の裏が内側に向く)
捻挫のグレード
1度(軽症):靭帯が伸びる
2度(中症):靭帯の一部が切れる
3度(重症):靭帯が完全に切れる
足関節捻挫を固定するメリット
まず、足関節捻挫の際に固定を行うメリットについて解説します。
組織損傷が治る
足関節捻挫に対して固定を行う最大の目的であり、最大のメリットとして、組織損傷を起こしたものを元の状態に戻すことが出来ます。
3度の完全断裂の場合、手術適応になることが稀にありますが(スポーツ選手の早期復帰を望む場合など)、基本的には完全断裂であっても、固定による保存療法によって靭帯の回復を図ることがほとんどです。
足関節捻挫であるあるなのが、「しっかり固定して治さないと靭帯が伸びてまた捻挫しやすくなるよ」というものがあります。
確かに、捻挫した足と捻挫をしていない方の足を比較すると、靭帯が伸びることで、捻挫した足の方が可動域が広くなり、「緩んでいる」ような状態になります。
しかし、靭帯が伸びるという要因以上に捻挫を繰り返させてしまう理由があるということが、最新の研究で分かってきました。
足関節捻挫を繰り返してしまう要因に関しては、デメリットの部分で解説していきます。
痛みや可動域を制御できる
足関節捻挫で固定を行うもう一つのメリットとして、動かさないようにすることで、痛みが出るタイミングを減らすことが出来ます。
固定によって可動域を制限することで、運動時痛を減らすことができ、動作による損傷部位の悪化を防ぐことが出来ます。
足関節捻挫を固定するデメリット
次に足関節捻挫に対して固定を行うデメリットについて解説していきます。
炎症を妨害してしまう
足関節捻挫によってほとんどの場合、炎症が起こります。
炎症とは簡単にいうと身体が治るための反応のことを言います。
発赤・腫脹・熱感・疼痛・機能障害が主な症状で、怪我をした場所が腫れていたり、熱を持ったりしているのが炎症のわかりやすい例です。
この症状が出ることで、異物を排除したりウイルスと戦う免疫細胞や身体を修復するための物質などが集まって、怪我をした場所を治そうとするのが炎症の仕組みです。
炎症と聞くと痛みの原因であり、かなり不快なものなので、起こさない方が良いものであると考えられ、冷やしたり固定をすることで、炎症を抑えようとします。

しかし、これによって循環が悪くなったり、炎症が妨害されてしまい、損傷部位の治癒は遅くなったり、治りきらずに慢性化してしまう要因になります。
よって当院では、炎症に対して抑え込むのではなく、炎症を早送りさせて、正しく終わらせる経過を辿るように治療を行います。
鎮痛までに時間がかかる
固定を行うことで、鎮痛に時間がかかるという研究があります。
これはラットに対する研究ですが、4週間ラットの後ろ脚に固定を行ってその後固定を解除したグループと、8週間同じようにラットの後ろ脚に固定を行ってその後固定を解除したグループで、鎮痛までの時間を比較した研究があります。
4週間固定を行ったグループは、鎮痛までに4週かかり、8週間固定を行ったグループは、鎮痛までに14週かかったという研究結果があります。
このように、固定を長い期間行うことで、痛みを慢性化させてしまう場合があります。

前の章で、固定を行うことによるメリットを大きく2つ解説しましたが、一般的に、組織損傷や炎症が治れば元通りになると考えられがちですが、足関節の靭帯の状態が戻っても、足関節は怪我をする前の状態に戻るわけではありません。
靭帯の状態は元に戻っているけれど、痛みが残ってしまうということはザラにあります。
そもそも痛みに対する「組織損傷があるから起こるもの」という考え方は、2020年に否定されています。
国際疼痛学会(IASP)が実際に発表しているもので、1974年の痛みの定義では、実際の組織損傷がないと痛みは起こらないとされていましたが、2020年の発表では、痛みは組織損傷の有無に関わらず引き起こされ、生理学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けるとされています。
よって、神経や筋肉に異常が無くても痛みは起こり、異常があったとしても、器質的な異常以外にも要因がある場合がほとんどです。
なぜこのようなことが起こるかというと、痛みは捻挫をした足で感じているのではなく、最終的に脳で感じているからです。
痛みの情報を脳まで運ぶルートは、急性的な痛みと慢性的な痛みではルートが異なります。

急性的な痛みの場合、痛みの感覚を司る体性感覚野という場所が強く関与して、ここが痛いと指を刺せるのが特徴です。
慢性的な痛みの場合、前頭葉の前頭前野という場所が関与する比重が大きくなり、体性感覚野の関与が減るので、「この辺が痛い」と、一点で痛い場所を指差せないのが特徴です。
急性的な痛みと慢性的な痛みは、身体に対しての役割や特徴が全く違います。
急性疼痛は身体にとって必要なもの
急性的な痛みは身体にとって必要なものです。
急性疼痛の場合、組織損傷による痛みの割合が大きいため、万が一急性疼痛を感じなくなってしまったら、組織損傷が起きたことに気づかず生活してしまうため、損傷部位の拡大、皮膚の連続性が断たれている開放性損傷であれば、適切な処置を行わなければ、感染などにより命の危機に発展してしまう場合があります。
また、動くと痛みが出る場合は疼痛回避行動という、一般的に言われている「痛い場所をかばう」も痛みがあることによって起こります。
疼痛回避行動によって、患部はある程度固定されるんです。
骨折の場合、骨を正しい形に癒合させなければ、後遺症になってしまうことがありますが、足関節捻挫の場合、疼痛回避行動という人間の防御メカニズムの中で勝手に固定されているのに、さらにギプスやテーピングで固定を行うことで、過剰な固定となり、予後が悪くなるケースがあります。

慢性疼痛は身体にとって不要なもの
慢性的な痛みは身体にとって必要が無いものです。
「捻挫での痛み」となると、全て同じ要因で急性的なものだけだと考えてしまう方が多いですが、捻挫の痛みが慢性化する場合も前頭前野が深く関与しており、組織損傷などの身体自体の異常によるものではなく、情動や認知によって痛みを引き起こします。
急性疼痛と慢性疼痛では脳まで運ぶルートが違うと解説しましたが、痛みを感じるためのセンサーや、脳まで届けるケーブル自体の種類に違いがあり、急性疼痛の方が慢性疼痛よりも脳まで伝えられるスピードが速いセンサーとケーブルを使っています。
急性疼痛は危険信号であるため、いち早く脳まで届ける必要がありますが、慢性疼痛は危険信号的な役割がないため、急性疼痛よりもゆっくりと脳へ届けられます。
また、急性疼痛の方が痛みの感覚が鋭く、慢性疼痛の方が重だるさや「耐えれないほどではないけど」といった鈍い痛みであることが多いです。

今出ている痛みを抑えるよりも慢性化させないことが最重要
急性疼痛と慢性疼痛を比べた時に、急性疼痛は身体に必要なものであると解説しました。
これを踏まえた上で先ほどの鎮痛までの時間を比較した研究ラットの研究について考えてみましょう。
人間の足関節捻挫の場合も、4週間で固定を外した場合でも、8週間で固定を外した場合でも個人差はありますが痛みがあります。
この痛みをどう考えるかが重要で、4週間で固定を外した場合、まだ修復していない靭帯の痛みであるとされて、また固定をして様子を見るというのが一般的です。
8週間で固定を外した際の痛みも、修復されていない靭帯のせいで、、、ということはなく、教科書上では靭帯の完全断裂の場合は6〜8週間の固定によって靭帯は修復されるとされているため、「使っていないから筋肉が萎縮しているせい」「そのうち治る」と、とても医療的とは言えない理由で治療が終わってリハビリを始めた結果、ラットの研究のように短い固定期間の人よりも10週間も痛みが残る、さらにそのまま長期的に慢性化してしまう方もいらっしゃいます。
よって痛みを慢性化させないという意味では、固定は逆効果になってしまう可能性があります。
再発のリスクが高まる
足関節捻挫に対して固定を行うことで、足関節捻挫を繰り返しやすくなるというデメリットがあります。
足関節捻挫に対して固定を行うベーシックな理由として、「固定をしないと靭帯が伸びて治ってしまうから、再発しやすくなる」というものがあります。
しかし、近年の研究では固定を行っている方が再発のリスクが高まるという研究がいくつも発表されています。
そもそも、従来から言われている靭帯が伸びて再発しやすくなる説と、一般的に考えられている怪我予防とでは、かなり矛盾点があります。
怪我の予防としてほとんどの人が経験したことがあるのが、「手首足首は入念に伸ばしてね〜」です。
この考え方であれば、靭帯が伸びて可動域が広がるのも、再発のリスクどころか怪我の予防になるはずです。
また、「足首が硬いから怪我しやすいんだよね〜」も非常にあるあるです。
固定を長くすればするほど足首が硬くなって、怪我をしていない足よりも可動域が狭くなっているのに、「靭帯は元通り再生されたから再発しにくい」というのはかなりずれてしまっているように感じます。

このように柔らかいから硬いから、可動域が狭いから広いからというのは、捻挫の再発のリスクの一つの要因かもしれませんが、優先度としてはかなり低いように思えます。
靭帯の正しい修復以上に足関節捻挫を再発しやすくしてしまう要因を次の章で紹介します。
学習性の不使用
足関節捻挫に対して固定を行うことで、学習性の不使用ということが起こります。
学習性の不使用とは、使わないことを学習してしまうというものです。
人間は、運動によって痛みが出るということを認知すると、固定をして動かさないようにしたり、足関節を他の場所でかばったり、いつも階段を使っていたのにエスカレーターを使ったり、できるだけ痛みが起こらないように、痛みを回避する行動を無意識に行います。
この学習性の不使用によって、いざ固定を外して痛みが無くなった時に、思ったように動かないということが起こります。
これによって、一度足関節捻挫をした人は繰り返しやすいという論文がいくつも出ています。
一般的な考え方だと、思ったように動かないというのは、筋肉や靭帯が硬くなっている、筋力が落ちている、というふうに言われてしまうと思いますが、このような症状が起こる要因として、運動と脳の仕組みが深く関係します。
まず、私たちが運動する時、感覚情報のインプットと脳からの運動器に対するアウトプットの指令によって身体を動かしています。
感覚情報とは、主に五感の中の眼から情報を得る視覚、触れたものから感じる触覚、耳から感じる聴覚に加えて、自分の体の位置を把握するために筋肉や腱などで感じる体性感覚や、バランスをとるために耳の中の三半規管で感じる平衡感覚などのことを言います。
厳密に言うとこの感覚は、目や耳や皮膚で感じているのではなく、そこから感覚神経という電線で繋がれて、最終的に脳で感じています。
このインプットした情報を頼りに、修正を行いながら脳から運動器に対してアウトプットの指令を行うことで、運動しています。
しかし、学習性の不使用によって、足関節に対するインプットとアウトプットの情報が激減します。

脳の大脳皮質には身体図式(ホムンクルス)という、感覚情報や運動指令を司る領域があり、感覚が敏感な舌や唇、細かい動きが必要な手足が大きい領域を占めています。
この領域の広さは、感覚情報のインプットや運動指令のアウトプットの量によって常に書き換えられているため、学習性の不使用や長期固定によって身体図式(ホムンクルス)の足関節の領域が縮小します。
これが、固定を外して痛みがなくなった時に感じる動かしにくさの正体です。

しかし、『動かして痛いことで学習性の不使用になるなら、固定しないで痛みが起こるのであれば同じでは?』という疑問が飛んできそうなのでお答えすると、固定をしないことを選択して、固定時より痛みが出た場合、学習性の不使用は起こります。
ここで我々の出番です。
横須賀えびの治療院では、足関節捻挫の痛みを減らす鍼治療、整体を行うことで、痛みによる学習性の不使用が起こりにくい環境を作っています。
また、患者さんのご予約の状況、症状によって固定を指示する場合もあります。
ここは、痛みによる学習性の不使用を取るか、固定による学習性の不使用を取るかを判断する技術が必要であるため、一度ご相談ください。
neglect like syndrome
足関節捻挫の治療の経過で学習性の不使用が起こると動かしにくくなると解説しましたが、学習性の不使用が起こっている指標として、ネグレクト・ライク・シンドローム(neglect like syndrome)という2大症状があります。
ご自身や周りの方々の捻挫の後にこういった症状が無いかどうか、確かめてみてください。
運動無視
運動無視とは、痛みがある足に意識や注意を傾けなければ、自分の意思で動かすことが出来ない状態です。
学習性の不使用による運動無視の症状がある患者さんの特徴として、「自分で動かしている感じがしない」「動かすイメージが湧かない」という自分の身体なのに、うまく動かせず、動かすために過剰な努力や代償運動が出ている場合が多いです。
認知無視
認知無視とは、痛みがある足を知覚する能力が低下している状態で、「自分の体じゃないような感じがする」といった言葉や、視覚情報として動かしたい足を見ていないと上手く動かせないといった、脳内では足の存在が消えてしまったような状態になります。
こういったネグレクト・ライク・シンドロームと呼ばれる症状は、先程解説した身体図式(ホムンクルス)が関係しており、足関節の領域が狭くなることで、運動指令のアウトプットや感覚情報のインプットが上手くいかなくなってしまう事で起こります。
足関節捻挫は固定した方が良いの?しない方が良いの?
足関節捻挫を固定をするしないに関しては正解はありません。
「足関節捻挫は固定しておけば間違いない」となってしまっているのが非常に良くないです。
症状によってのメリットデメリット、患者さんの今後の生活を考えた上でのメリットデメリットを考えた上で、固定の有無を考えるべきだと思います。
また、固定をする目的として、痛みを取るために固定をするというのは、固定をした方が鎮痛までに時間がかかるということを解説した通り、固定をすることで慢性化の道を辿ってしまいます。
痛みに関して最も避けたいのが慢性化です。
逆に急性疼痛は身体にとって必要な生理反応なので、今ある痛みを取るというよりも、いかに慢性化させないかが大切です。
これまで固定に対してかなり否定的に話してきましたが、必要な症例も一定数あります。
私が考える固定が必要な症例は、後遺症になり得る組織損傷がある場合です。
足関節捻挫では、捻挫を繰り返してしまう捻挫ぐせ(足関節不安定症)が最もメジャーな後遺症ですが、これに関しては、先ほど解説した通り、組織的な損傷よりも脳の機能が関係しており、固定でのデメリットが上回る症例が多いため、当院では足関節捻挫に対して固定をほとんど行いません。
しかし、足関節に限らず、生活に支障が出てしまうような後遺症を残す可能性がある部位の場合、固定が必要な症例は必ずあるので、何を目的に固定をするのかを見誤らないことが大切です。
まとめ
足関節捻挫を固定するメリットデメリットについてご理解いただけましたか?
一般的には足関節捻挫に対して「とりあえず固定」という考え方になりがちですが、固定をすることによるデメリットも多く、固定をすることで再発しやすくなる要因を作ってしまっている場合があります。
固定をすれば怪我をする前の足関節に戻るというわけではなく、組織的には元に戻っても、脳や神経などの機能面に影響が出るため、とりあえず固定ではなく、メリットとデメリットを天秤にかけた上で、選択することが大切です。
これまで捻挫を何度も繰り返してしまっていた方も、知識を正しいものにアップグレードすることで、負のサイクルに終止符を打てるかもしれません。

当院で治療を受けた患者様の声
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オーストラリア|君島克佳|20代|男性
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日常生活では特に寝起きが痛く歩くのも困難でした。正直良くなるまでにかなり時間がかかると思っていました。
治療を行ってもらい、徐々に寝起きの痛みがなくなり、歩行時の痛みが改善されていきました。少しずつ動けるようになって、ランニングも可能になりました。
海外でサッカーを行っているのですが、普通は安静にしながら治療を受けると思いますが、横須賀えびの治療院では動かしながら治療を受けることができました。
海老野先生が非常に親身に話を聞いてくれるので安心して治療を受けることができました。
アスリートなど運動を行っている人で早期回復したい方には是非お勧めしたいです!

オーストラリア|川崎凌|25歳|男性

横須賀えびの治療院院長の海老野です
最後までお読みいただきありがとうございます。
専門学校入学と同時に治療業界で修行を始め13年が経ち、これまでに2万5千人以上の患者様の治療を行ってきました。
これまで数多くの病院を巡り、治療を行ってきたけれど中々改善できずにネットで色々調べてこのページに辿り着いた方もたくさんいらっしゃると思います。
ネットにはたくさんの情報が掲載されており、実施に何が正しいのかわからなくなってしまう方が非常に多いです。
痛みに対しての理解を深めることが、今あなたの体に起きている体の痛みを改善するための大きな助けになります。
1日でも早く痛みを改善できるように一緒に頑張っていきましょう!
